相続税の計算方法がわかる!基本ルールを具体例付きで解説

疑問・悩み・ 相続税ってどうやって計算するの?
・ 税額控除の内容も知りたい!
・ 実際の数字例でイメージを掴みたい!

こんな疑問を解決します。

✔ 本記事の内容

・ 相続税の計算全体の流れ
・ 各ステップの具体的な内容
・ 事例で解説

✔ 本記事の信頼性

公認会計士・税理士として会計事務所を運営しています。
10年以上の実務経験を活かしてシンプルでわかりやすい解説を心がけています。

今回は、「相続税の基本的な仕組み」を解説してきます。

相続税の計算は一見複雑に見えますが、実は大まかな流れや基本のステップを押さえるだけで、ぐっと理解しやすくなります。
この記事では、相続税の計算方法をステップごとに整理しながら、できるだけシンプルに解説していきますのでぜひ最後までご覧ください!

それでは、相続税の計算の解説をはじめていきます。

1. 相続税計算のための6つのSTEP


相続税の計算は、「相続人の確定」から始まり全部で6つのSTEPを経て計算されます。

各STEPポイントを押さえておくことで、相続税計算の全体像が分かるようになりますので、順を追って確認していきましょう。

STEP1 相続人の確定

相続が発生したら、まずは誰が相続人となるのかを確認することから始めます。

① 法定相続人の確認
まずは民法で定められている法定相続人の確認を行います。

相続の放棄が行われた場合や遺言で第三者が指定された場合など「法定相続人」と「実際に財産を相続する人」が一致しないケースがありますが、相続税の計算は、「法定相続人」を中心に組み立てられているため、その範囲を確認することはとても重要です。

POINT<法定相続人の確認手順>
配偶者は、常に法定相続人 となり、下記の第1〜第3順位の相続人と共同で相続します。

第1順位:子(直系卑属)
↓  子・孫がいない場合に進む
第2順位:親(直系尊属)
↓  子・親ともにいない場合に進む第3順位:兄弟姉妹
第3順位:兄弟姉妹

②  実際に相続をする人の確定 
遺言がある場合や相続放棄があった場合は、法定相続人すべてが相続するとは限りません。

また、遺言などによって法定相続人以外が相続人となるケースもあります。

そのため遺言の有無の確認、遺産分割協議などを通じて実際に相続する人の確定を行う必要があります。

③ 実際に取得する財産の割合を確認
遺言や遺産分割協議の結果を通じて、各相続人が受け取る財産の割合が決定されます。

この割合は後の相続税額の個別計算に大きく影響を与えます。

STEP2 課税価格の算定(課税対象となる財産の算定)

次に、相続財産のうち課税対象となる金額を算定します。「どの財産が課税対象になるのか」を明確にすることが重要です。

ここでは以下の計算式に基づいて課税対象となる財産の計算をします。

POINT課税価格 =(本来の財産 + みなし相続財産 + 相続時精算課税財産 + 3年以内贈与財産)−(非課税財産 + 債務・葬式費用)

▪ 本来の財産
預金や不動産、有価証券など、被相続人が保有していた一般的な財産。

▪ みなし相続財産
死亡保険金や死亡退職金など、名義は被相続人ではないが相続により取得したとみなされる財産。
たとえば生命保険金は受取人が指定されていても一定額を超える部分は課税対象となる。

▪ 非課税財産
墓地・仏壇・仏具のように課税されない財産や、生命保険金・死亡退職金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)などが非課税財産となる。

▪ 相続時精算課税財産
生前に贈与された財産のうち、相続時精算課税制度を利用したもの。
相続時精算課税財産は相続財産として計算に含める必要がある。

▪ 3年以内贈与財産
相続開始前3年以内に被相続人から贈与された財産は、相続税の計算上加算する必要がある。

▪  債務・葬式費用
被相続人が残した債務(借入金、未払税金など)や葬式費用などは、課税価格から差し引くことが可能。

STEP3 課税遺産総額の算定(課税される財産の算定)

次に、STEP2で算定した課税対象となる資産から相続税の基礎控除を差し引き、相続税が課税される財産の算定を行います。

POINT▪ 課税遺産総額
課税遺産総額(課税される財産)=課税価格-基礎控除

▪ 基礎控除
基礎控除の金額は3,000万円+(法定相続人×600万円)

*法定相続人は実際に財産を取得する相続人ではなく、また相続放棄をした人も含んだ、民法で定められた法定相続人の人数になる点に注意が必要です。

STEP4 相続税の総額の算定

次にSTEP3で算定した課税遺産総額を法定相続分で分割したと仮定し、それぞれに対する税額を計算します。

POINT<計算手順>
① 課税遺産総額を法定相続割合に沿って分割

② 法定相続割合に基づく各人の相続税額を算出

③ 相続税の総額を算出

*相続税の総額 は 各人の法定相続分に税率をかけて求めた税額の合計をいう。

相続税の税率は超過累進税率となっており、取得金額が大きいほど相続税は高くなります。

またこの仮計算で出てきた相続税の合計額が「相続税の総額」となります。

STEP5 各人の相続税額の算定

次に、STEP4で算出した「相続税の総額」を、実際の財産の取得する割合によって各人の相続税を算出します。

POINT▪ 各人の相続税の算出
各人の相続税額 = 相続税の総額 × 各人の実際の取得割合

実際に財産を取得する割合に応じて、相続税の負担額を計算するものであり 遺言や遺産分割協議がある場合、法定相続割合とは異なるケースもあります。

STEP6 各人の相続税額の算定

次に、Step5で算出した各人の相続税から個々の相続人の状況に合わせ、以下のような税額の加算や税額の控除を適用し、各自が納める相続税額を計算します。

▪ 相続税の2割加算(法定相続人以外に適用)
配偶者や子などの法定相続人以外が財産を取得した場合、その人の相続税額に20%を加算する制度です。

▪ 暦年贈与税の控除
被相続人から生前に贈与を受けており、その贈与に対してすでに贈与税を支払っている場合、相続税額からその分を控除できます。

▪ 配偶者の税額軽減
配偶者が相続により取得した財産が法定相続分または1億6,000万円以下であれば、その分について相続税がかかりません。

▪ 未成年者控除
未成年の相続人については、満20歳までの年数×10万円が控除されます。

▪ 障害者控除
障害者が相続人である場合、満85歳(特別障害者は満80歳)までの年数×一定額(一般障害者10万円、特別障害者20万円)が控除されます。

▪ 相次相続控除
10年以内に被相続人が相続などで財産を取得して相続税を支払っていた場合、その分の一部を控除できます。

▪ 外国税額控除
国外にある財産について外国で相続税が課された場合、その税額の一部を日本の相続税から控除できます。

▪ 相続時精算課税分の贈与税相当額の控除
生前に相続時精算課税制度により贈与を受けて贈与税を納めていた場合、その贈与税額を相続税から控除できます。

2. ケーススタディ

ここでは実際の数値を使って、6ステップを数字例でご紹介します。

▪ 前提条件

 ・被相続人:夫​
 ・家族構成:妻、子A(25歳)、子B(22歳)​
 ・相続財産:​預金1億円​、生命保険金:4,000万円(受取人:妻)​
 ・債務       :銀行借入金500万円
 ・葬儀費用:​300万円
 ・遺産分割:妻、子A、子Bで遺産分割協議を行い、法定相続人が法定相続割合に基づき遺産を相続する
         ことになった。
 ・その他    :3年前に子Aへ1,000万円贈与をしており、177万円の贈与税を支払っている。
              :2年前に子Bへ500万円贈与しており、53万円の贈与税を支払っている

STEP1 相続人の確定

① 法定相続人
家族構成から妻、子A、子Bが法定相続相続人なります。

子の世代に該当者がいるので、亡くなった夫に親、兄弟姉妹世代いたとしても法定相続人にはなりません。

② 実際に財産を取得する相続人
遺産分割協議で法定相続人が遺産を取得することになったため、妻、子A、子Bが実際に相続財産を取得することになります。

③ 実際に取得する財産の割合
遺産分割協議で法定相続人が法定相続割合によってが遺産を取得することになったため、妻が1/2、子Aが1/4(1/2×1/2)、子Bが1/4(1/2×1/2),の割合で財産を取得することになります。

STEP2 課税価格の算定

相続する財産のうち、課税対象となる財産を算定します。

<相続財産一覧>

・ 本来の財産               :預金1億円、
・ みなし相続財産        :生命保険金4,000万円
・ 非課税財産               :生命保険金の非課税枠1500万円
・ 相続時精算課税財産 :該当なし
・ 3年以内贈与財産      :子Aへの贈与1,000万円、子Bへの贈与500万円
・ 債務・葬式費用        :銀行借入金500万円、葬式費用300万円                         *生命保険金の非課税枠 (500万円 × 法定相続人3人 = 1,500万円)

 これらを課税価格算定の式に当てはめると、課税価格は以下のようになります。

<課税価格の計算>
課税価格 =(預金1億円 + 生命保険4,000万円−非課税枠1,500万円−子ABへの贈与分1,500万円−銀行借入金500万円−葬式費用300万円)= 1億3,200万円

 よって、課税価格は1億3,200万円と算定されます。

STEP3 課税遺産総額の算定

次に、STEP2で算定した課税対象となる資産から相続税の基礎控除を差し引き、相続税が課税される財産の算定を行います。

<課税遺産総額の算定>
・ 課税対象となる資産1億3,200万円―基礎控除額4,800万円=8,400万円
 *基礎控除の金額は3,000万円+(法定相続人×600万円)という式から求められます。
 *基礎控除額=3,000万円+3名×600万円=4,800万円

よって課税遺産総額は8,400万円となります。

STEP4 相続税の総額の算定

次にSTEP3で算定した課税遺産総額8,400万円を法定相続割合で分割したと仮定し、それぞれに対する税額を計算 します。

<相続税の総額の算定>
① 課税遺産総額を法定相続割合に沿って分割
 ・ 妻:8,400万円 × 1/2 = 4,200万円​
 ・ 子A:8,400万円 × 1/4 = 2,100万円​
 ・ 子B:8,400万円 × 1/4 = 2,100万円

② 法定相続割合に基づく各人の相続税額を算出
・ 妻:​4,200万円 × 20% − 200万円 = 640万円​
・ 子A:​2,100万円 × 15% − 50万円 = 265万円​
・ 子B:​2,100万円 × 15% − 50万円 = 265万円
*適用する税率は税率表に基づき決定

よって相続税の総額は640万円 + 265万円 + 265万円 = 1,170万円となります。

STEP5 各人の相続税額の算定

次に、Step4で算出した相続税の総額1,170万円を、実際の財産の取得する割合によって各人の相続税を算出します。

事例では法定相続割合によって財産を分割する協議がされているため、法定相続割合と実際に財産を取得する割合は同じになります。

<各人の相続税額の算定>
妻  :​1,170万円 × 1/2 = 585万円​
子A:​1,170万円 × 1/4 = 292.5万円​
子B:​1,170万円 × 1/4 = 292.5万円

よって、妻は585万円、子Aは292.5万円、子Bは292.5万円となります。

STEP6 各人の納付額の算定

最後に、Step5で算出した各人の相続税から税額の加算や税額の控除を行っていきます。

今回の事例では妻が配偶者控除、子A、子Bが暦年贈与税の控除が可能です。

<暦年贈与税の控除>
子Aと子Bは、相続開始前3年以内に被相続人から贈与を受けており、その際に支払った贈与税額を相続税額から控除できます。本事例では全額控除できるものとして計算を行います。
<配偶者控除>
配偶者の法定相続分が1億6,000万円に満たない場合には1億6,000万円まで財産を取得しても、配偶者の相続税納付額はゼロになります。
事例において配偶者である妻は相続税が全額控除される結果となります。
<納付額の計算結果>
・ 妻の納付額:585万円-585万円=0
・ 子Aの納付額:292.5万円-177万円=115.5万円
・ 子Bの納付額:292.5万円-53万円=239.5万円

よって妻は納付不要、子Aは115.5万円、子Bは239.5万円の相続税を納付することになります。

3.まとめ

ここまで相続税の計算方法 について6つのSTEPに分解して解説してきました。最後に、重要なポイントを振り返っておきましょう。

まとめ
計算の流れは6ステップ!
・STEP1 相続人の確定​
・STEP2 課税価格の算定​
・STEP3 課税遺産総額の算定​
・STEP4 相続税の総額の算定​
・STEP5 各人の相続税額の算定​
・STEP6 各人の納付額の算定​

相続財産の把握と相続人の確定が出発点
まず、相続財産の全容を正確に把握し、誰が相続人であるかを確定することが重要です。​これにより、後の手続きがスムーズに進行します。​

✅ 控除や特例を活用して納税額を適正に
配偶者の税額軽減、未成年者控除、障害者控除などの各種控除や特例を適切に適用することで、納税額を軽減することが可能です。​これらを理解し、適用漏れがないよう注意しましょう。​

相続税対策は早めに準備を!

相続税の計算方法を理解することで、適切な節税をプランニングすることができるようになります。

ぜひ、早めに対策を検討し、安心して相続を迎えられるように準備を進めましょう!

この記事は役に立ちましたか?

もし参考になりましたら、下記のボタンで教えてください。

コメント

この記事へのコメントはありません。

CAPTCHA