相続税申告と納税の流れを解説!必要書類と注意点

疑問・悩み・ 相続税の申告ってしないといけないの?
・ 税務署に提出する資料ってどんなものがあるの?
・ 申告の際の注意点も知りたい!

こんな疑問を解決します。

✔ 本記事の内容

・ 相続税申告の対象になる人・期限・提出先など
・ 申告時に注意しておきたいポイント
・ 添付資料の種類と準備のコツ

✔ 本記事の信頼性

公認会計士・税理士として会計事務所を運営しています。
10年以上の実務経験を活かしてシンプルでわかりやすい解説を心がけています。

今回は、「相続税の申告と納税」を解説してきます。

相続税の申告には期限があります。
期限を過ぎてしまうと延滞税や加算税のリスクがあるため、早めの対応が大切です。
この記事では、相続税の申告の流れや留意点をシンプルに解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください!

それでは、相続税の申告と納税についての解説をはじめていきます。

1. 相続税の申告義務者

相続税の申告は、原則として取得した財産の課税価格が基礎控除額を超えた、相続税が発生する場合に申告義務が生じるのが基本です。

しかし例外として、税額がゼロであっても、特例の適用や制度上の要件を満たすために申告が必要になるケースも存在します。

<相続税の申告が必要な人>
・ 相続・遺贈・死因贈与により財産を取得した人(課税価格が基礎控除額を超える場合)
・ 小規模宅地等の特例を適用する人(税額が0円でも必ず申告が必要/相続税法第69条の4)
・ 配偶者の税額軽減を適用する人(税額が0円でも適用には申告が必要)
・ 相続時精算課税制度の適用を受けた人(相続税法第21条の16 贈与財産の加算のため申が必須)

特に特例制度や一定の税額控除を受ける場合では、相続税額がゼロでも申告が必要ケースがあるため注意が必要です。

2. 相続税の申告書の提出期限

相相続税の申告書は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に提出しなければなりません。

この期限を過ぎると、延滞税や無申告加算税などが課される場合がありますので注意が必要です。

なお、提出期限が土日祝日の場合は、翌営業日が期限日となります。

3. 相続税の申告書の提出先(納税地)

相続税の申告書は、原則として被相続人の死亡時の住所地を管轄する税務署に提出します。

ただし、被相続人の住所が国外である時は例外的な取り扱いがなされます。

4. 申告における留意点

相続税申告には提出期限や納税地の他にも、やや特殊なケースですが注意すべき点があります。

✓ 遺産が未分割の場合の申告
仮に遺産分割の協議が終わっていなくても、申告期限内の申告が必要になります。
この場合、一時的に法定相続分で分割したものと仮定して申告を行い、後日分割が決まったら修正申告や更正の請求を行うことになります。
また、遺産が未分割の場合、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減の適用を予定している場合は、申告時に「申告期限後3年以内の分割見込書」という申告後3年以内に遺産が分割される見込みである旨の申請書を添付することが必要になります。
なお、分割によって各人の相続税が異なる場合は更正の請求、修正申告が必要になります。

✓ 相続税の申告義務の承継
申告義務者が相続税の申告前に亡くなっていた場合、その義務は申告前に亡くなった方の承継者に引き継がれます。 死亡した者の相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に、その死亡した者に代わって申告書を提出しなければならないとされています。

5. 申告書に必要な書類

申告書には、被相続人の財産や相続人の状況を証明するための各種資料を添付する必要があります。

申告書には、以下のような添付書類が必要になります。

POINT<主な提出資料>
•  被相続人の戸籍謄本
•  相続人の戸籍謄本、住民票
•  マイナンバーに関する本人確認書類
•  遺産分割協議書または遺言書
•  相続人全員の印鑑証明書
•  不動産の登記簿謄本・固定資産評価証明書
•  預金残高証明書、通帳コピー
•  有価証券の残高証明書
•  生命保険金の支払通知書
•  退職金等の支払通知書
•  借入金の残高証明書
•  葬儀関係の領収書

添付すべき書類は、取得財産の内容や適用する特例によって異なります。

上記以外にも必要となるものがありますので税理士等の専門家に相談することをおすすめします。

6. 相続税の納付

「相続税の申告が完了したら次に納付を行う必要があります。

納付期限は申告と同様に「被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内」になります。

ここでは相続税の納付について解説します。

✓ 納付方法
相続税は金銭一括納付が原則になります。

金融機関の窓口や税務署の窓口だけでなく、クレジットカード納付、ダイレクト納付(口座引き落とし)、電子納税(ネットバンキングから送金)により納付を行うことができます。

また、分割納付である「延納」や相続財産で納める「物納)」といった制度が用意されています。

納付方法は相続人ごとに判定され、「延納」や「物納」は要件を満たした場合に認められ、別途必要書類の提出が必要になります。

<延納>
相続税の金銭一括納付が難しい場合、一定の条件の下で延納(分割納付)が認められています。

✔ 概要
延納とは、相続税額が10万円を超え、金銭一括納付が難しい事情がある場合に、納付を困難とする金額を限度として分割納付が認められる制度です。
ただし、延納期間中は利子税がかかること、申告書とは別に申請書を提出すること、担保の提供が要求されていることなどの要件があり注意が必要です。

✔ 申請要件
延納を利用するには、次の4つの条件すべてを満たす必要があります。
1.  納付すべき相続税が10万円を超えていること
2.  金銭で納付することが困難な金額の範囲以内であること
3.  「延納申請書」、「担保提供関係書類」を期限までに提出すること
4.  担保を提供すること。(延納税額が50万円未満かつ延納期間が3年以下である場合は担保提供不要)

 

<物納>
✔ 概要
物納とは、相続税の納付において、延納による分割納付も困難な場合に限り、相続財産をもって納税することが認められる制度です。
その適用にあたっては厳格な条件や審査があります。
また、物納に充てることができる財産の種類や優先順位が決まっており、管理・処分が難しい財産や権利関係が不明なものは物納不適格財産とされるため、事前の確認が重要です。

✔ 申請要件
物納を利用するには、次の4つの条件すべてを満たす必要があります。
1. 延納で金銭で納付することが困難な金額を限度としていること
2. 物納申請財産が物納に充てることができる財産であること
3. 相続財産(相続時精算課税により贈与された財産を除く。)のうち日本国内にあるもので、物納順位に従っていること。
4. 『物納申請書』及び『物納手続関係書類』を期限までに提出すること

※物納に充てられる財産には**物納順位(不動産 → 株式 → 動産)**があり、原則として上位の財産から順に審査・許可されます

 

7. まとめ

ここまで、相続税の申告に関する基本的なルールや注意点について解説してきました。

最後に、重要なポイントを整理しておきましょう。

 

今回のまとめ

✅ 相続税の申告が必要な人とは?
• 原則として、相続・遺贈・死因贈与で取得した財産の課税価格が基礎控除額(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)を超える場合に申告が必要
• 税額がゼロでも、特例(小規模宅地等の特例・配偶者の税額軽減・相続時精算課税制度など)を適用する場合には必ず申告が必要
✅ 相続税申告の期限と提出先
• 申告期限は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内
• 提出先は、被相続人の死亡時の住所地を管轄する税務署(国外居住者は納税管理人を通じて)
✅ 申告時の留意点
• 遺産が未分割でも、一旦法定相続分で申告し、後日修正申告や更正の請求が可能
• 申告義務者が亡くなった場合は、その承継人が義務を引き継ぐ
✅ 添付書類の準備
• 戸籍、遺産分割協議書、不動産・預貯金・保険など各種資料が必要
• 特例を使う際は、利用状況の証明や明細書も忘れずに

✅相続税の納付
 金銭で一括納付することが原則
金銭一括納付が難しい場合は延納(分割納付)や物納(金銭以外で納付)の制度も用意されている。

 

相続税対策は早めに準備を!

相続税の手続きは、期限・書類・条件などが細かく決められています。

事前に情報を整理し、必要があれば専門家のサポートを受けることで、スムーズな相続が実現できます。

ぜひ、この記事を参考に早めの準備を始め、安心して相続を迎えられるように備えていきましょう。

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